「おいしい!」がつなぐ、幸せが循環するレストラン vol.2
March 2021
Text:Mari Matsunaga
Photo:Ryo Higuchi
カウンター越しでの気さくなオーナーシェフとの会話も楽しい、中目黒にある、人気ビストロ「グルドボワ」。今回は、店のスペシャル食材のひとつ、近江木下牛を使った料理や今後について伺いました。
自然な環境の中、のびのびと育った近江木下牛のおいしさ
滋賀出身のシェフは、生まれ育った地元の近江牛をスペシャリテに使いたいと思っていたそう。あるウェブメディアで、家族経営で繁殖から肥育まで一貫して行っている、近江八幡の木下牧場を知り、早速連絡。牧場まで赴き、年も近い2代目と意気投合し、そのまま家にも招かれ、シェフ自ら肉を焼き、家族と一緒に食べることに。「今まで食べてきた肉との違いに感動しました。木下牧場では格付けやサシにこだわらず、牛一頭ごとに合わせて、飼料の量や配合を変え、大切に育てています。ストレスなく育っているので、赤身の中にサシが適度に細かく入っていて、ピュアな味わい。この牛に出合ってから、これ以外の牛肉は食べたくないっていうほど惚れ込んでいます(笑)」
肉は、部位ごとに塊で購入。ランプやリブ、肩ロースなどその時により仕入れる部位は変わります。調理法は、肉の旨みをダイレクトに感じてもらいたいと、シンプルなローストに。まずフライパンで焼き色をつけたあと、オーブンへ。最後に直火で香ばしく焼きあげるのがポイント。ロゼ色に仕上がったローストは、とってもやわらか。脂の甘さを感じながらもしつこさがなく、すっと溶けていきます。添えるソースも、牛の骨や肉と野菜だけをじっくり煮詰めたシンプルでやさしい味わいで、滋味深い肉の持ち味を引き立てます。近江木下牛のロースト2人前¥4,000。
自慢の食材を使って、美しく軽やかなひと皿に
フランス時代に培った自由な発想で作る料理は、アラカルトのほか、おまかせコース¥6,500円も用意。広島で自然と共生しながらハーブや野菜を育てている高掛農園など、気になる生産者には会いに行き、魚や野菜は、豊洲まで行き直接目で見て仕入れたりと、食材と真摯に向き合うシェフの料理は、意外性のある食材の組み合わせや、センスある盛り付けで、食べる人を驚かせてくれます。見た目の美しさだけでなく、肉や野菜の端材はソースに使ったり、脂はラードにするなど食材を余すことなく使うことも大切にしているそう。
お客さまも生産者も料理人もみながWinWinの関係でありたい
人との出会い、そしてつながりを大切にしているシェフ。コロナ禍であっても、できるだけ仕入れの量を変えたくないといいます。「こういう時期だからこそ、生産者たちが大切に育てた食材を無駄にすることなく、心を込めた一品に仕上げ、お客さまに真っ当な価格で食べてもらいたい。テイクアウト専用メニューは作らず、店のメニューで出しているものはすべてテイクアウト可能にしています」。
オープンから2年。ここに来れば、いつでもおいしいものに出合えると、多くの人に愛されるお店に。「最近、西小山のブルワリーのクラフトビールを扱い始めました。味はもちろんのこと、生産者の顔が見える安心感あるものをこれからも揃えていきたいです。ノンアルコールドリンクや食材も、もっと開拓したいし、ワインバー的に使える2軒目も思案中です」とシェフ。食べ手はもちろん、生産者、お店に関わるみなが笑顔になれるよう、お店は日々パワーアップ中。これからの展開が楽しみです。
布山純志さん オーナーシェフ
2012年、料理修業のため渡仏。帰国後、都内のフランス料理店、ワインバーを経て、中目黒に2018年、ビストロ「グルドボワ」をオープン。
La gueule de bois グルドボワ |
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東京都目黒区東山1-8-6
Tel 03-6884-4630
営業時間 15:00〜20:00(※緊急事態宣言に伴い、営業時間短縮中。最新の情報はお店までお問い合わせください)
定休日:水曜・第4火曜日
*現在、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、店舗衛生対策を徹底して行い営業しています。